日本最大の蚊、トワダオオカ

 カ科(Culicidae)は吸血昆虫として有名であり、衛生上きわめて重要な分類群です。しかし、このグループには吸血せず、花の蜜などから吸汁するだけの種もいます。今回紹介するトワダオオカToxorhynchites towadensis (Matsumura)も吸血しない種であり、日本最大の蚊として知られています。

 9月の下旬になっても最高気温が30℃を超える日があり、採集をするには暑すぎると考え、山地で調査を行いました。標高1000m程度にある川沿いの森で採集していたところ、樹木の表面に大きな蚊が数頭飛来しているのが見えたため、捕虫網で採集したところ、本種でした。この蚊は北海道から九州における環境の良い森林に生息し、成虫は春から秋にみられ、樹洞や竹の切り株、古タイヤ等に溜まった水の中から発生するとされています。また、幼虫は他の蚊の幼虫(ボウフラ)等を摂食して成長するという生態的特徴があります。

 本種は大型でありながら記録が少ないためか、都道府県によってはレッドデータ種に選定されているようです。ただし、今回のように標高の高い地域だけではなく、都心にある皇居からも記録があります。今後調査が進めば記録が増える可能性があり、地域における生息状況の把握のため、森林性の双翅目の調査時に確認していければと考えています。

参考文献

篠永哲(2014)皇居で新しく記録されたブユ(Simuliidae)とカ(Culicidae).国立科博専報, 50: 459– 
    460.
田悟敏弘(2018)ハエ目.埼玉県環境部みどり自然課(編),埼玉県レッドデータブック動物編2018
    (第4版),pp. 175–192. 関東図書.
津田良夫(2019)日本産蚊全種検索図鑑. pp. 1–128. 北隆館, 東京.

日本産蚊全種検索図鑑 [ 津田良夫 ]価格:16500円
(2025/9/28 20:13時点)
感想(0件)

コメント

タイトルとURLをコピーしました