乾燥標本の作成

 乾燥標本は双翅目昆虫類に限らず、多くの昆虫類で作成され、最も扱いやすく、観察もしやすいと考えられます。基本的に中胸盾板の中心から横にずらした箇所に標本作成用の針を刺し通すことによって針刺し標本として作成します(私は1号針を主に使用しています)。針刺し標本にできないと考えられる小さな種は三角台紙に木工用ボンドを薄めたものを用いて貼り付け、その台紙に針を通し、台紙貼り標本として管理しています。三角台紙は昆虫専門店で購入することができ、ケント紙を切って自作することもできます。また、微針という極小の針(私はAusterlitz Insect Pins 000号を使用しています)を小さく切り取ったポリフォーム板などに刺した後、その微針で体を刺し通し、ポリフォーム板に通常の標本針を通すという、衛生害虫として有名なカ科の種の標本作成で主に採られている方法もあります。

 乾燥標本を作成するときの注意点として、同定するときにはどの部分に刺毛があるのかということや翅脈についても確認する必要があることから、それらの形質を全て確認できるように脚や翅が重ならないようにすることが重要です(ピンセットや固定用の針を用いて形を整えます)。そして双翅目の乾燥標本を作成する際の最大の注意点は採集後にできるだけ短時間で作成することです。双翅目昆虫類は体が脆いものが多く、死後乾燥がかなり早く進行します。大型の種ではそうなる前に針を刺し通し、乾燥標本として完成させることが望ましいです。採集してすぐに標本が作成できない、個体数が多い場合には冷蔵庫内に一時的に保管し、乾燥を遅らせるなどの手段がありますが、私は遅くとも採集した翌朝までに作成を完了するようにしています。乾燥した個体は無理に針を通そうとすると壊れてしまうことがあるため、そのような場合には解剖用として三角紙などに入れ保管しておく、台紙に貼り付けて台紙貼り標本にするなどの方法があります。

 標本には採集地名・年月・採集者名を記したラベルを付けます(海外の研究者が利用できるように英語表記もしています)。また、市町村合併などによって現在の地名が将来変更される場合があるため、可能であればGPSデータも採集地名に併記することが望ましいです。GPSデータは現地で採取する、地名を記録しておき、Geocoding などのサイトを用いて調べる方法があります。ラベルはMicrosoft Excelなどのソフトを用い、大量に作成してハガキと同じくらいの厚さのラベル紙に印刷する方法がおすすめです。最後に、上記の情報以外に発生源(寄生性の種における寄主など)の情報があり、一枚のラベル紙では収まらない場合、複数枚のラベル紙を付けることもあります。

 作成が完了した乾燥標本はカビの発生や標本害虫による食害を防ぐために防虫剤とともに標本箱に入れ、保管します。また、針刺しや台紙貼りをしていないものに関しては、採集場所・年月を記述した三角紙などに入れ、その三角紙を防虫剤を同封したタッパーなどに入れて保管します。完全に乾燥していないものが入っている三角紙をタッパーに入れて密閉してしまうとカビが発生することがあるため、私は完全に乾燥するまでは防虫剤とともにタッパーに入れ、蓋を少し開けておくことが多いです。

 以上の方法は私が実践している内容になります。最良の方法ではないかもしれませんが、標本作成・管理のための一助となれば幸いです。

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